檸檬のころ/豊島ミホ

檸檬のころ (幻冬舎文庫)

檸檬のころ (幻冬舎文庫)

とある田舎の進学校の生徒たちの話。力いっぱい青春小説。
いわゆる青春小説って言うのは、読んでてこっちの方が恥ずかしくなったり、引いたり、「付き合ってられるか!」と思うことがありがちですが、これは、そうはならなかった。
それは、登場人物たちに「自分に酔っちゃってる」人がいないからだろう。青春っていっても、甲子園出場を目指す野球部員とか、そういうのは出てこない。教室の隅でヘッドフォンで音楽聴いてる女の子とか、そんな感じ。
ここまで抵抗なく読めたのは、多分、作者が私と同じ高校出身って所が大きいんだろう。
生物講義室の前から第一体育館まで繋がる長い長い廊下とか、校舎から短い渡り廊下で繋がってる殆ど離れの図書室とか、生物講義室の窓から見えるテニスコートとか、通学路が長い坂道とか。流石に名前は変えてるけど、舞台がまるっきり母校なんだもん。作者の文章力以上に情景がリアルに浮かぶ。
私には、こんなストーリーのようなことは何もなかった高校だったけれど。