ファザーファッカー/内田春菊

ファザーファッカー (文春文庫)

ファザーファッカー (文春文庫)

前に読んだ本の感想でも書きます。
内田春菊作品は「目を閉じて抱いて」とか「私たちは繁殖している」とか読んでて結構好きです。でも目を閉じてとワタハンは漫画なので、内田春菊の文章読むのはこれが初。部室の本棚にあったで犀川さんとかこりんごさんとかと雑談しつつたらたら読みました。↑に出してるのは文庫ですが、私が読んだのはハードカバーです。ハードカバーだと画像がなかったので文庫で出しておきます。ちなみにハードカバーは帯に嘘が書いてありました。

私は、よく娼婦の顔をしているといわれる。さまざまな仕事を経験したが、それだけは絶対にしなかったのに。ところが私は思い出した。十五歳のとき、私は娼婦だったのだ。売春宿のおかみは私の実母で、ただ一人の客は私の育ての父だった…。

アマゾンの商品説明欄より。自伝風小説らしいです。
「私たちは繁殖している」(一応フィクションらしいですがほとんど育児エッセイみたいなもん)とか読んでると、内田春菊ってすげえ文句の多い人だな、と思うことが多い。たちの悪いクレーマーというわけではなくて、彼女の主張することは無根拠ではないし筋は通ってるんだけどもうちょっと許容範囲広くしようよ、と思う。要するに自己主張の強い人だな、と。
ファザーファッカー」は自伝風小説というだけあって、主人公の少女の一人称で語られています。語り口うまくてするする読めるんだけど、全ての記述が主人公の主観によるもの。主人公の少女の境遇は不幸なもので、それを描くことがこの作品の主眼なのかもしれないけど、どうも「私ってばかわいそうでしょ?」という匂いが作品全体に付きまとっているようで、読んでいて主人公に感情移入できず、醒めてしまう。
被害者側の視点だけじゃどうも底が浅いというか、不幸な人間を上手に描く作品って加害者側にも感情移入できるように書いてあるもんだと思うんだけどなあ。