ウロボロスの純正音律/竹本健治

ウロボロスの純正音律

ウロボロスの純正音律

ウロボロスシリーズ第3弾にして完結。作家やら編集者やらが実名で出てきます。
「南雲堂」という出版社から長編マンガ執筆の以来を受けた竹本健治(小説家だがもともとはマンガ家志望だった)。知り合いにプロのマンガ家はいるし作家やファンの子にもマンガのうまい人が多いからそういう人にアシスタントをして貰って千人針方式で作品を仕上げよう、と、南雲堂の社長にある程度の人数で作業できる場所を貸して欲しいと依頼したところ、案内されたのは社長の別宅である「玲瓏館」の一室。イカニモな洋館で美しきメイド嬢と怪力の使用人付き。館に集まったそうそうたるミステリ作家・批評家・編集者の面々の前で殺人事件が起こる。そして事件と並行して「玲瓏館」の秘密も徐々に解明されていく――というのがストーリーです。多分。
作中で書かれているマンガ「入神」(囲碁マンガ。竹本先生が書いてる途中でヒカルの碁の連載が始まったらしい。)は実際にあります。ちゃんと南雲堂から出てます。読んだことないけど。これ読んだら読みたくなった。
実在の人達がたくさん出てくるので楽しいです。もちろんこれは竹本健治が創作したフィクションなので作中の人物≠実在の人物なのですが。今回は特に京極先生が大活躍。京極先生あなたこんなに暇じゃあないでしょうってくらい登場します。篠田真由美は流石にこんな人じゃないだろうなあ。講談社から出てる本なのに集英社の編集者が大活躍なのは問題ないんだろうか。ないんだろうけど。内輪ネタ多数。これ読んで楽しく笑ってる人はマニアです。お友達になりましょう。
わっかりやすいなあ、と言うのが読んだ感想。世界が崩壊しない。普通の小説だった。世界ががたがたおかしくなっていくのがウロボロスシリーズの特徴だと思ってたんだけど…うーん。あとがき見るとさもありなんですが。逆に言うと、前2作が意味不明で困ったと言う人にはお勧めなのかもしれない。
ウロボロスシリーズにまっとうな解決編なんて期待してなかったんだけど予想に反して本作はまっとうな小説で…この結末はなあ。結構壁に投げる一歩手前だった。中盤の、仮説に次ぐ仮説が喧々諤々議論されるところなんかいかにも竹本健治だし面白かったんだけど。この某90年代に出版された超有名作品を読まずに純正音律を読んでしまったという人とか…いないのかな。読んでなかったら確実にラストで置いていかれる。
他の人の感想を聞きたい…。検索しても引っかからないしなあ。貸すから誰か読む?
ウロボロス読んだとなると次は笠井潔の天啓シリーズ読むべきなんだろうか。でも宴も器もアマゾンにないや。絶版かな?


この作品は「今回は誰が殺されるんだろうわくわく」的な楽しみ方があるので、つまりは被害者の名前すらかけないので、以下は既読の人読んで下さい。





















以下作品のネタを割っています。未読の人ご注意下さい。読まないほうがいいと思います。



ネタバレ感想箇条書き。

  • 作中での福井健太氏の扱われようは一体…。ちょっと国樹さんの時と態度違いすぎますよ登場人物の皆さん。京極先生なんであんなに邪険なんだろう。
  • 「堂々と手の怪我を隠せるアイテムを常備してる人がいらっしゃるじゃないですか」がツボだった。でもいつも手袋してるんならそもそも怪我しないと思う。
  • 暦・音楽・囲碁・黙示録etcに関する薀蓄が殺人事件そのものには全く絡まないってぇのはなあ。薀蓄は好きなんだけど。これ薀蓄差っぴいて事件だけ書いたら厚さ3分の1以下になるよね。
  • そして薀蓄をもうちょっと判りやすくお願いします…ついていけん。関口君ちゃんと質問してー。特に囲碁。「囲めば取れる」しか知らない*1のでさっぱりでした。
  • 謎の棋譜の東やら北やら書かれていた謎って結局解明されたんだっけ…時間が出来たら要再読。
  • 事件そのものは某古典の名作と同じ、トリックは某90年代に出版された超有名作品のまるパクリっていうのはやっぱ頂けないなあ。こんなこと出来るのは実名小説ならではなんでしょうけど。新本格読んでるとうっかり古典黄金期の作品のトリックを知ってしまうことは多いですが*2、この某90年代に出版された超有名作品を読んでないと、最後「???」だと思う。読んでない人なんていないのか?
  • そして、そのパクリトリックに説得力がなさ過ぎる。全然納得できないよ。
  • ↑を書きながら「読者が既存の有名作品を読んでいることを前提して書かれている小説」ってなんかあったなあ、と思ったら思い出した。6とんだ。
  • 北村薫先生おいしいとこ持っていきすぎです。

*1:つまりヒカルの碁読んだだけ。

*2:オリエント急行とか読んでないけどトリック知ってます。