邪魅の雫/京極夏彦
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/27
- メディア: 新書
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今ネット上を一巡りして他の人の感想を見てきたとこ。
「冗長だけど面白い」と言っている方が多かったですが、私もそう思いました。
諸手を上げて快哉を叫びたくなるような傑作ではなかったですが、この切ない読後感は今までなかった。
ラストで榎木津がかっこよかったからもう何でもいいや。
以下ネタバレで感想書きます。未読の人は読め。
以下作品のネタを割っています。未読の方ご注意ください。ちゅうか読め。
- この話は榎木津礼二郎の物語――なのだろうか。
- 視点人物が西田新造、益田、江藤、大鷹、女(=神崎だよね?)、青木――と、6人もいる。視点がころころ変わるし、事件についても時系列に沿って語られるわけじゃないし、400ページくらいまでは読むのがつらかった。色々混乱した。4つめの事件以降ばたばた人が死に出して色々急展開があって、やっと面白くなってく感じ。ストーリーの構造上前半がつまらないのは仕方ないのかな。
- 関口君がまともだ。
- 画家さんのキャラがオンモラキの伯爵と被るー。画家のが小物だが。
- 大鷹篤志さんのモデルはもしかして某ファウストの編集してる人だったりするのかな。
- ミステリ的には堅実。だけどその分提示される謎が地味。このシリーズにはもっと突拍子のない謎を期待してしまう。
- これが魍魎の対になる話だ、と考えると、魍魎で「殺人を犯す人間はけっして異常な人間ではない」「殺してしまえるチャンスがあってしまっただけだ」と語られていて、今作はその「容易に人を殺せるチャンス」が作品の中心であった――という所で繋がるのかなあ。
- でも話の構造としてはむしろジョロウグモ。
- 妖怪がらみの薀蓄がなかった(´□`)!物足りない…。
- ラストで榎木津かっこよすぎ。萌え。
- 奥付の前にあったロゴは馬場のロゴ(「馬場の看板は横文字でよく判らない」と418ページに書いてあった)で、馬場の命名は薔薇十字探偵社の命名より前だから、つまりは榎木津がぱくったんだと考えると、更に萌え。
- でもあの榎木津がねえ…こういう話は知りたかったような知りたくなかったような。
- 榎さんの「わはははははははは!」っていう快刀乱麻の活躍っぷりが拝めないのは寂しい。
- 誰も言及しなかったけど、お見合いの日程まで決まってた、って榎さんはお見合いをOKしたってことなんだろうか…。
- 京極堂の脇役っぷりが悲しい。やっと出てきたと思ったらもう黒装束だった。
- 京極堂が何でもかんでも取っておいて綺麗に収納してしまう人だ――というのは、ちょっと意外。
- 所で冒頭のモノローグの人物は画家なんだろうか。「貴方は私に一滴の雫を呉れただけだ。」って言ってるけど…画家は毒薬貰ってないし。雫は毒薬じゃなくて殺意のメタファーなのかな。
- 憑物落としのカタルシスが弱いよう。
- 百器徒然袋の方で、大磯の事件の後の榎木津が異様にハイテンションだったとかかれてた(と思う)けど、それはこの事件の反動なのかな。
*1:床にワックスかけたらかけ終わったあとに部屋の一番奥にあるテレビがつけっぱなしとかドジなことしてました。