女王国の城/有栖川有栖

女王国の城 (創元クライム・クラブ)

女王国の城 (創元クライム・クラブ)

夜中に布団に包まって一心不乱に読書、って好きなバンドのライブでモッシュしてる最中くらいに幸せな時間。
やっとこさ読了しましたよ。
次が出る頃には江神さんどころか火村先生までもが年下になってるんじゃなかろうか。


ふと大学から姿を消した江神さんの後を追ったEMCの面々。たどり着いた先はUFOを拝む新興宗教の本拠地。
無事江神さんと再会するものの、殺人事件発生。何故か頑なに警察への通報を拒む教団。EMCは教団の本部<城>の中に閉じ込められてしまう。


やっぱりクローズドサークルものだった。
前作から15年と言うことで、江神さんが携帯持ってたらどうしようとか思ってましたが、作中は91年でした。まだバブルの頃ですよ。アリスが「インターネットって何だ?」とか言ってる。
前作の双頭の悪魔が傑作であり、火村シリーズにはミステリ的にイマイチな作品がないわけではなく、あんまり面白くないけど双頭の悪魔が忘れられないから有栖川作品を読み続けている、って人だっていると思います。学生編の新作の出来いかんによっては有栖川有栖本格ミステリ作家としての地位が危うくなるのでは、とまで考えていたんですが、杞憂でした。
双頭の悪魔を超えた、とまで言えないけど、面白かった。私は前3作を文庫で持ってるのでよく判らないですが、これ双頭の悪魔より厚いんじゃないでしょうか。読み応えたっぷり。
たかだが4年かそこらしか待ってない私ですが、EMCの面々のやり取りがしみじみと楽しい。アリスとマリアの仲の微妙さも楽しい。
ハイライトは信長さんの「邪魔しやあすな!」
ロジックもよく出来てた。


以下、ネタバレの感想を書きます。未読の方は読まないように。
丁寧に推理して犯人の条件を挙げていくとことか、わくわくして面白かったんですけど、犯人が脇役過ぎてちょっと驚きが少なかった気も。
事件の推理そのものより「何故ここまで頑なに警察の介入を拒むのか」の方が切れ味がよかったな。

  • ペリハ
  • 花火が2分遅れ
  • 雪女

の三点がちょっと消化不良。
「ペリハ」については言及されてたけど、こんなんだったらない方がスマートにまとまったんじゃないかと思う。花火二分遅れは何かの伏線じゃないかと思ったけど違った。ミスリーディングってやつ?「雪女」については、最後まで読んでも何のことか判んなかった。
作中で江神さんの年齢が29になってますが、二年浪人+八年目だから、1年の時21、4年生で24、誕生日来てても8回生で28なんじゃないかなあ。30まで学生でいるためには院に進む必要が。