乱鴉の島/有栖川有栖
お久しゅうございます火村先生小文字*1の有栖川先生。
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/06/21
- メディア: 単行本
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ブンブン行く前に寄った本屋で買い行きのバスの中で読み帰りの電車の中で読み読みしてついさっき読了しました。読みたてのほかほかです。
火村シリーズ初の孤島物ですよ。「月曜の昼まで迎えの船が来ない」とかそんな状況ですよ。
感想はネタバレで、以下に。
注:こっから先↓は話のネタ割ってます。読んでない人立ち入り禁止。
ふう、出たばっかの本だしな、こんくらいやっとくか…。
読んで最初に思ったのが、これは「今」という時代にしか通用しない小説だと言うこと。時代の寵児ハッシーとか、ネットで株の売買とか、衛星使ったケイタイとか、パソコンの履歴がどうとか、クローン技術云々のくだりとか。1年前には書かれなかっただろうし、3年後くらいに読んだら意味不明だと思う。良い小説は時代を超えて読めるものだと思うんですが、こんな時事ネタ満載なのはどうなんですかね。ビジネス書じゃないんだから。
ああ、書いてて自分で判った。読んでて感じた違和感は、多分このせいだ。いわゆる孤島だの雪の山荘だの「クローズド・サークルもの」は現代に蔓延する無粋な科学捜査を排除して純粋論理による推理を描く為のものだと思うのだけれど*2、この小説も勿論論理による推理なんだけど、孤島モノのくせに現代にからみすぎなんだ。「死体見つけたから株売った」はちょっと面白かったけど。
「推理小説におけるトリックは出尽くした。後は組み合わせの問題だ」なんて言われて久しいけれど、まんまそんな感じの仕掛け。仕掛けに関しては多分新しいことは何一つない。唯一面白かったのは「電話線切ったのが実は被害者」ってとこくらいかな。孤島モノの常識をひっくり返してますね。
多分作者が一番書きたかったのは秘密結社の真相の部分なんだと思う。だから、どちらかと言えばこれは恋愛小説だ。トリック以外のところに重点を置くと言う点で、近年の綾辻行人みたい。
以下気になった点をいくつか。
- 火村とアリスが烏島に滞在することになった経緯が、あまりにもご都合主義というか、無理がある。とはいえ普通に社会人生活を送っている人間(それも探偵役)が犯人も予期しない形で孤島に閉じ込められるなんて、やっぱこんぐらいしなきゃなんないのかなあ…。犯人が探偵の存在を認識した上でクローズド・サークルになると後期クイーン問題なんかも絡んできちゃうし。
- パソコンに保存されてたメールの受送信履歴だけ見て満足してたけど、フリーメールっていう発想はないんだろうか。
- 結局カラスの剥製の謎が明かされていない。
- っていうかハッシーはねえだろハッシーは。
- こんだけカラスカラス言ってんのにカラスが殆どトリックに絡まないのがもったいない。
あとがきにも書いてあったけど、次はもうちょっと孤島孤島した孤島モノが読みたいです。有栖川先生次の長編は一体何年後でs(ry