刺青殺人事件とブギーポップと千原ジュニアと吹雪の山荘

刺青殺人事件/高木彬光

刺青殺人事件 新装版 (光文社文庫)

刺青殺人事件 新装版 (光文社文庫)

表題作の他にエッセイやら未発表短編やら入ってるのに本編しか読んでない。でもそろそろ読んだこと自体を忘れそうなのでここに書いとく。
この時代の探偵小説はシンプルで美しい。あと仰々しい。
タイトル通り刺青が絡んでくるのですが、銭湯に行って刺青をした人を探すって書いてあった。時代だなあ。
刺青に関する描写がものすごく深い。

沈黙ピラミッド/上遠野浩平

ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド (電撃文庫)

ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド (電撃文庫)

ブギーポップはもう完全に惰性で読んでるなあ。エンブリオまではものすごく面白かった気がする。エンブリオ以降は内容あんま覚えてないもん。私が年取っただけかな。
いたずらに合成人間やらMPLSやらを増産するのではなく、そろそろ物語を収束させて欲しい。収束点はやっぱブギーポップと統和機構の対決かな。無理かな。

14歳/千原ジュニア

14歳 (MouRa)

14歳 (MouRa)

ジュニアさんが引き篭もってた中学〜高校生くらいの話。
驚いた。これは完全に「小説」だ。私的にはホームレス中学生より断然面白かったけど、自伝とかエッセイ的なものを期待した人にとってはそうじゃないかも。小説として上手い。上手すぎて普段のジュニアさんと全然キャラが違う。すわゴーストライターか。

吹雪の山荘/笠井潔→岩崎正吾→北村薫若竹七海法月綸太郎巽昌章

作者名がずらっと並んでますが、リレー小説です。執筆順は↑の通り。私が作品を読んだことがあるのは笠井潔北村薫法月綸太郎だけ。巽さんは時々解説とかで読みますけど。
リレー小説で本格ミステリって無理じゃね?だって謎を設置した人と解く人が違うんだよ?伏線張った人と回収する人が違うんだよ?と思いながら、他人の作った謎をどう扱うのかわくわくしながら読みました。
執筆者が変わるたびに視点ががらっと変わって読みにくい、というリレー小説の弱点を克服するため、担当の作家の持ちキャラがそれぞれ登場します。笠井潔→ナディア・モガール、北村薫→円紫さんシリーズの「私」、法月綸太郎法月綸太郎、といった具合。読者がなじんだキャラなら(こんなん読むのは重度のミステリマニアだけだろ)読みやすいだろう、という趣向。各作家の持ちキャラが吹雪の山荘に閉じ込められて殺人事件が発生します。
2004年に「ミステリーズ!」で連載してたのをちらっと見てたのですが、これ、企画は大分前からあったらしい。笠井潔が第一章を書いたのが十数年前で、法月綸太郎に回ってきたのが94年、ここでトリを書くはずだった有栖川有栖が辞退したり(そのため有栖川有栖は参加してないけど大学生の有栖川有栖が作中にいる)まあのりりんだしそこはそれでのりりんが書き終わったが96年。
ある程度謎解きとかの骨格を決めてからリレーしてたのかと思いきや、そうじゃなかったらしい。巽さんの苦労が偲ばれます…。
北村薫の持ちキャラが名前のついていないキャラなんで、他の作家が呼称などどう扱うのか、とか面白かったです(不純)。
楽屋オチ的な楽しさはあったけど、作品としては…。まあ書いてる本人が話がどうなるか判ってないんだから当然と言えば当然。二転三転の挙句ごちゃごちゃしすぎて解決編に鋭さがない。岩崎正吾の章なんかまるまるいらないんじゃねえの?
それにしても他人様のキャラクターを扱うのに遠慮がないなあ。笠井先生とか「ナディアはそんなこと言わない!」とか思ってるんじゃないだろうか。腫れ物に触れるように扱われても嫌だけど。
矢吹駆の影がちらちらしてたのが駆ファン的にはごちそうさまでした。